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顔面神経麻痺

2018.05.16

こんにちは

東京都目黒区都立大学駅から徒歩2分にある

鍼灸院Lucidus[ルーシダス]の院長山内です。

 

顔面神経麻痺についてのお問い合わせがありました。

顔面神経麻痺は昔から鍼灸の適応で、様々な報告があります。

 

多くの患者さんは、「鍼灸は効くのか効かないのか」、患者さんはそれだけが知りたいのでしょうけれども、

顔面神経麻痺という言葉は非常に大きな言葉なので、それだけの情報では何とも答えられないのが実情です。

 

その上で、患者さんにも理解してほしい情報がありますので、記載することにしました。

 

当記事では、

・顔面神経について

・顔面神経麻痺について

・発症機序

・検査

・経過

の各項目を記載しています。

 

 

<顔面神経について>

顔面神経=第Ⅶ脳神経(中枢神経)です。

〇特徴

・表情筋を動かす運動神経が有名ですが、それ以外にも分泌副交感神経や味覚神経により構成されます。

→つまり顔面神経障害では運動障害以外に多彩な障害が見られることがあります。

 

 

<顔面神経麻痺について>

・Bell麻痺

・Hunt症候群(ラムゼイハント症候群)

この2つが臨床的に頻度が高く、全体の約70%を占めます。

以下はこの2つの例について述べていきます。

中には、中枢性の疾患である、脳出血・くも膜下出血・脳梗塞などでも顔面神経麻痺を起こすこともありますので、顔面神経麻痺を起こしたらすぐに病院を受診してください。

後ほど述べますが、抗ウィルス薬も発症すぐでないと効果を発揮しないこともありますので。

鍼灸も発症後1週間~2週間経てば行うことが可能です。こちらも早期に行うと良い効果を示すことが多いです。

 

 

Bell麻痺

・人口10万人当たりの年間の発症例:15-30例 欧米・日本で著明な差はない。

・男女比:ほぼ1:1 性差はない

・患者数は30歳代が最も多いが、発症頻度は50歳代が高いとの報告があります。

・妊娠(特に妊娠後期)の女性はBell麻痺が発症しやすい。

・季節差はない

 

Hunt症候群

・人口10万人当たりの年間発症例:2-3名

・20歳代と50歳代に発症頻度が高いとの指摘があります。

・小児においては、男児<女児に発症頻度が高い。

・5月と8月が少なく、3月と4月、6月と7月に発症例が増加すると報告されています。

 

 

<発症機序>

・両者ともに膝神経節で再活性化したウィルスの関与が考えられています。

・Bell麻痺は、HSV-1( Herpes simple virus: 単純ヘルペスウィルス)が大多数。10%~20%はVZVによるものと考えられています。

・Hunt症候群はVZV(Varicella Zoster Virus:水痘・帯状疱疹ウィルス)

 

このようなウィルスを原因としたウィルス神経炎により、神経管内で顔面神経が腫脹することで神経が圧迫・絞扼され、顔面神経の虚血を進め浮腫を増悪させ、神経の腫脹が更に進行するという悪循環により、顔面神経の障害が進行して麻痺が生じ、さらには変性するものと推察されています。

 

通常、浮腫が下肢などで起こった場合は、細胞組織に吸収されたりして逃げる場所がある(浮腫む)のですが、顔面神経は中枢神経であるために頭蓋骨を通ります。骨は膨らんだり縮んだりしないために、神経に浮腫が起こると、その浮腫の逃げ場がなく、結果的に自分の神経を圧迫させるということです。

 

 

<検査>

・ENoG

顔面部の筋電図検査ですが、大きな病院でできます。

(ちなみに顔面神経麻痺は耳鼻科・耳鼻咽喉科にかかられることをお勧めします。)

このENoGは、顔面部の筋電図で左右差(比)をみているのですが、

それを発症2週間以内に行い、その数値である程度の予後がわかります。

 

ENoG値<10%は重症例で、(神経の)再生線維が表情筋に到達する3-4か月以降に回復が始まると同時に、病的共同運動や顔面拘縮など機能異常あるいは後遺症も出現すると言われています。

 

 

<経過>

Bell麻痺は良好で、自然治癒率は70~80%。

Hunt症候群で自然治癒割合は約30%~40%と報告されBell麻痺と比べて予後不良であり、また程度によっても予後は変化します。
完全麻痺例では自然治癒はわずか約10%。不全麻痺の自然治癒率は66%。

 

また年齢も予後に関連する一因。

例えば40歳代以下の症例は50歳代以上の症例に比べ、有意に予後が良好。

さらに、小児におけるBell麻痺症例では90%が完全に自然治癒し、成人に比べて予後が良好であると報告されています。

一方Hunt症候群においては、小児での発症頻度は低く、その予後や治療成績に関する報告は少ないと報告されています。

 

 

基本的にまずは発症から3か月、それが一つの治療戦略になります。

もちろん、重症例では更に長期を見据えた治療戦略になります。

 

鍼灸も中には発症後半年、1年を過ぎて来院される方もいらっしゃいますが、発症後すぐに行った方がより効果が高い傾向があります。

発症してから1週間~2週間経ってから行うのが良いと言われています。

 

 

 

まずはここまで記載しておきます。

次回は具体的にどのような治療が良いのか

「マッサージ」or「表情筋運動」?

をお伝えしようと思います。

 

 

 

<参考文献>

・顔面神経麻痺診療の手引き 金原出版 日本顔面神経研究会